GPT-Rosalind-6:OpenAIの生物学特化モデル、審査制の利用条件と料金

GPT-Rosalind-6は、OpenAIが2026年10月30日に公開した生物学、創薬、トランスレーショナル医療向けの新モデルです。OpenAIのフラッグシップ推論モデルであるGPT-6 Astraと同じ重みを使いながら、デュアルユースにあたる生物学の質問にもより多く回答します。その代わり、利用できるのは審査を通過した組織に限られます。OpenAI自身のライフサイエンス系テストではGPT-Rosalind-5.5を大きく上回り、API料金は入力100万トークンあたり15ドル、出力100万トークンあたり75ドルです。
つまりOpenAIは、同じ重みを2つのルールで提供していることになります。標準的な拒否基準を持つ汎用モデルと、審査を通過した研究機関向けに生物学分野の拒否を緩めた版です。
要点
- OpenAIのシステムカード補遺によると、GPT-Rosalind-6はGPT-6 Astraの重みをそのまま使っています。違いは拒否の線引きと、誰が使えるかという点です。
- OpenAIの社内テストでは、GPT-Rosalind-5.5と比べてMedChemBench v7が28.9%から49.6%に、GeneBench Pro v13が16.7%から37.7%に伸びました。
- OpenAIは生物学的リスクを「High」と評価しており、「Critical」には達していないとしています。Criticalレベルを測る4つの生物学的設計評価は、いずれも閾値に届きませんでした。
- 利用には承認が必要です。OpenAIは申請者ごとにミッション、ユースケース、ガバナンス、アクセス管理を審査し、アクセスを制限または取り消すこともできます。
- API料金はコンテキスト272Kまでで100万トークンあたり入力15ドル、出力75ドルです。GPT-6 Astraの10ドルと50ドルより50%高くなっています(OpenAIの料金ページ)。
GPT-Rosalind-6はどんなモデルか
GPT-Rosalind-6は、OpenAIのライフサイエンス向けモデル「Rosalind」シリーズの3作目です。OpenAIは同モデルを「生物学、創薬、トランスレーショナル医療のためのフロンティア推論モデル」と位置づけ、顧客にはGPT-Rosalind-6 Researchという製品名で提供しています(システムカード補遺)。API上のモデル名はgpt-6-rosalindです(料金ページ)。
シリーズは2026年4月、最初のGPT-Rosalindリサーチプレビューから始まりました。続いて2026年6月3日にGPT-Rosalind-5.5が登場し、こちらはGPT-5.5をベースに追加学習したモデルでした(GPT-Rosalind-5.5のシステムカード)。
バージョン6は作り方が異なります。OpenAIによれば、GPT-6 Astraと同じ重みを使い、生物学向けの学習データの追加やポストトレーニングは行っていません。デュアルユースの質問とは、研究上の正当な価値がある一方で悪用にもつながりうる質問のことで、たとえば病原体が細胞に侵入する仕組みの詳細などが該当します。こうした質問に対して、RosalindはAstraよりも拒否する頻度が低くなっています。ただし生物兵器化に関する要求は引き続き拒否し、それ以外の安全性に関わる分野ではAstraと同じ拒否基準を維持しています。
重みがAstraと同じである以上、GPT-Rosalind-5.5からの性能向上の大部分は、生物学の追加学習ではなくベースモデルが新しくなったことによるものです。i-SCOOPの分析も同じ点を指摘しています。
GPT-Rosalind-5.5、GPT-6 Astraとの比較
下の表は、OpenAIが公表している数値をまとめたものです。ベンチマークの数値はいずれも最も高い推論設定でのOpenAI社内の結果で、第三者による再現は行われていません。
| GPT-Rosalind-5.5 | GPT-Rosalind-6 | GPT-6 Astra | |
|---|---|---|---|
| ベース | GPT-5.5から追加学習 | GPT-6 Astraと同じ重み | フラッグシップモデル |
| 公開日 | 2026年6月3日 | 2026年10月30日 | 本記事では扱わない |
| 提供形態 | 審査制アクセス | 審査制アクセス | 一般向けAPIとChatGPT |
| MedChemBench v7(99問) | 28.9% | 49.6% | 公表なし |
| GeneBench Pro v13(129問) | 16.7% | 37.7% | 公表なし |
| LifeSciBench Gold(94問) | 44.0% | 61.3% | 公表なし |
| 生物リスク知識(素点) | 79.2% | 78.3% | 63.3% |
| API料金(100万トークンあたり、入力 / 出力) | $5 / $25(gpt-rosalind-research) | $15 / $75 | $10 / $50 |
出典:GPT-Rosalind-6補遺、GPT-Rosalind-5.5システムカード、OpenAI API料金。料金はプロンプトが272Kトークンまでの場合のものです。
各ベンチマークが測っているもの
- MedChemBench v7は、医薬品化学の問題への回答を採点基準(ルーブリック)に沿って評価し、その平均スコアを示します。
- GeneBench Pro v13は、ゲノミクスの課題を1回の試行で解けるかどうかを測ります。OpenAIは、テスト時の構成が本番環境と一部異なると注記しています。
- LifeSciBench Goldは、ライフサイエンス全般を幅広く扱う問題セットです。OpenAIは全100問のうち6問を除外しており、対象は94問です。
3つともOpenAI独自のベンチマークです。わかるのはOpenAIのモデル同士でどれだけ伸びたかであり、AnthropicやGoogleなど他社のモデルと比べてRosalindがどの位置にあるかはわかりません。
OpenAIが「Critical」ではなく「High」と評価する理由
OpenAIのPreparedness Framework(準備態勢フレームワーク)は、リスクを能力レベルごとに分類しています。「High」は、OpenAIがリリース前にセーフガードの導入を求めるレベルです(GPT-Rosalind-5.5システムカード)。「Critical」はその1段階上にあたります。OpenAIはGPT-Rosalind-6を、生物・化学分野でHighに該当し、Criticalには達しないモデルとして扱っています(補遺)。
生物リスク知識の評価では、Rosalindのスコアは78.3%、拒否率は9.4%でした。拒否分を補正すると85.0%で、GPT-6 Astraは90.0%です。Rosalindのほうが多くの質問に答える一方、答えた質問での正確さはAstraがやや上回るということです。
ウェットラボでのトラブルシューティングに関する質問を集めたTroubleshootingBenchでは、832問中491問に正解し、正答率は約59%でした。Highの目安となる閾値は36.4%です。
OpenAIは、AAVカプシドのパッケージングやSHP2タンパク質の機能予測を含む、生物学的な設計能力を測る4つのテストも実施しました。いずれもCriticalの目安となる閾値には届いていません。
サイバーセキュリティについては、補遺はGPT-6 Astraの評価結果をそのまま参照しており、OpenAIはAstraをCriticalと評価しています。RosalindはリアルタイムブロックなどAstraの標準的なサイバー対策を引き継いだうえで、サイバー分野ではより保守的な拒否基準を加えています。OpenAIが過去から使っているサイバー分野のジェイルブレイクテストでは、攻撃の成功率がRosalindで14.3%、Astraで15.7%でした(低いほど良い)。
OpenAIは自ら限界も挙げています。Criticalの閾値はあくまで暫定的な推定値であること。評価は生物学的な危害を引き起こす能力を完全には検証できていないこと。ベンチマークや採点方法が変わったため、過去のシステムカードの結果とは直接比較できないことです。
利用できる組織と条件

GPT-Rosalind-6はChatGPTのサブスクリプションには含まれません。審査制アクセス(trusted access)は、機微なモデル向けのOpenAIの審査制度です。組織が申請し、OpenAIが申請者の素性とモデルの使い方・管理方法を確認したうえで、承認された組織だけが利用できます。OpenAIは「資格のある科学者、研究機関、企業、政府パートナー」を対象に提供し、利用を認める前に申請者ごとに審査を行います(補遺)。審査項目は次のとおりです。
- ライフサイエンス分野での正当なミッションと、信頼できるユースケースがあること。
- 研究面と運用面のガバナンスが整っていること。
- 組織内で誰がモデルを使うかを管理できること。
政府機関以外の申請者は、事業者確認とコンプライアンス審査を受けます。政府機関には、バイオセキュリティ、バイオセーフティ、公衆衛生上の備え、生物防衛の業務向けに別の申請ルートがあります。対象となる条件はGPT-Rosalind-5.5で定められたルールを踏襲しており、今回のリリースで範囲が広がったわけではありません。
承認された顧客にも義務が課されます。利用者を許可されたユーザーに限定し、最小権限の原則に沿ったアクセス管理を行い、不要になったアクセス権は削除しなければなりません。また、出力を実験や論文発表、その他の重要な意思決定に使う前に、資格を持つ担当者が内容を確認する必要があります。OpenAIは利用状況を監視しており、アクセスを制限または取り消すことができます。
OpenAIのヘルプセンターによると、プランにはDiscoveryとResearchの2段階があります。Discoveryで承認を受けても、そのままResearchを使えるわけではなく、ResearchはChatGPTの通常のチャットタブでは利用できません。エンタープライズ契約のない米国の大学研究室はRosalind Academic Planから申請でき、対象の研究室はBusiness Standardのシートを最大30席、最長12か月無料で利用できます。ただし、この場合も審査制アクセスの承認が前提です。
料金
OpenAIのAPI料金ページに掲載されているgpt-6-rosalindの料金は次のとおりです。
| コンテキスト長 | 入力 | キャッシュ済み入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| 272Kトークンまで | $15.00 | $1.50 | $75.00 |
| 272Kトークン超 | $30.00 | $3.00 | $112.50 |
料金は100万トークンあたりです。比較すると、同じ区分でGPT-6 Astraは入力10ドル、出力50ドル、従来のgpt-rosalind-researchとgpt-rosalind-discoveryは5ドルと25ドルです。地域別のデータレジデンシー用エンドポイントを使う場合は10%が上乗せされます。
つまり研究機関は、同じ重みに対してAstraの定価より50%多く支払い、その見返りとしてデュアルユースの生物学分野で緩い拒否基準を得ることになります。
研究機関やバイオテックチームにとっての意味
すでにGPT-Rosalind-5.5を使っているチームにとっては、医薬品化学やゲノミクスの課題で大幅な性能向上が見込めます。ただし、これはOpenAIのテストでOpenAIが出した数値です。本番業務を移行する場合は、まず自社のデータで独自に評価を行い、出力コストがgpt-rosalind-researchの3倍になる点も予算に織り込んでおくべきでしょう。
まだ承認を受けていないチームに適用される条件は、これまでと変わりません。申請前に、ガバナンス、アクセス管理、出力を人が確認する体制を整えておく必要があります。
今回のリリースからは、開発手法の変化も読み取れます。GPT-Rosalind-5.5はGPT-5.5に追加学習を施したモデルでしたが、バージョン6は汎用モデルをそのまま使い、特定の分野だけ拒否を緩め、誰が使うかは審査で管理するという形をとっています。同じOpenAIがサンドボックスでのインシデントを受けて自社の学習環境を引き締めた件はOpenAIのフロンティア学習のオフライン化で、汎用ラインの進展はGPT-6.1 Terraで取り上げています。
よくある質問
GPT-Rosalind-6はChatGPT PlusやProで使えますか?
使えません。GPT-Rosalind-6を利用できるのは、OpenAIの審査制アクセスプログラムで承認された組織だけです。OpenAIのヘルプセンターによると、Researchプランのアクセスは、ChatGPTの通常のチャットタブでは利用できません。
GPT-Rosalind-6は別途学習されたモデルですか?
いいえ。OpenAIのシステムカード補遺によると、GPT-Rosalind-6はGPT-6 Astraと同じ重みを使っています。違いは、デュアルユースの生物学の質問に対する拒否基準が緩いことと、アクセスが制限されていることです。
GPT-Rosalind-6の料金はいくらですか?
OpenAIのAPI料金ページによると、gpt-6-rosalindはプロンプトが272Kトークンまでの場合、100万トークンあたり入力15ドル、出力75ドルです。272Kトークンを超えると、それぞれ30ドルと112.50ドルになります。下位の区分では、キャッシュ済み入力は100万トークンあたり1.50ドルです。
GPT-Rosalind-6は危険なモデルですか?
OpenAIは生物・化学分野の能力を、セーフガードが必要となる「High」と評価していますが、「Critical」には達していないとしています。Criticalレベルを測る4つの生物学的設計評価は、いずれも閾値に届きませんでした。生物兵器化に関する要求は引き続き拒否します。
個人の研究者でも申請できますか?
アクセスは個人ではなく組織に付与されます。OpenAIは組織のミッション、ユースケース、ガバナンス、アクセス管理を審査します。米国の大学研究室であれば、Rosalind Academic Planのもとで研究責任者(PI)を通じて申請できます。


